2006年1月22日(日)
THE有頂天ホテル


話題の三谷幸喜作品「THE有頂天ホテル」を見てきました。
凄い人気ですね。
映画館は人また人・・・ホールはお客で溢れており前に進むことさえままなりません。
全席指定なのにこの混雑ぶりは一体何でしょう?
1000人近い観客の入る日劇だからでしょうか?
こんなに混んでいる映画館を見たのは久しぶりです。
ちょっと70年代や80年代のことを思い出しました。




いわゆるグランドホテル形式を地で行った映画です。
出演者は日本のトップスターばかり。
役所広司、松たか子、佐藤浩一、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、原田美枝子、角野卓造、唐沢寿明、YOU、伊東四朗、オダギリジョー、津川雅彦、西田敏行、生瀬勝久、麻生久美子・・・
二谷作品ということで当初想定した役者が全員出演OKを出したようです。

グランドホテル形式ってあまり成功した例を知らないのですが、この作品は出演者がみな日本人で(当たり前か・笑)よく知っている人のせいか、かなり楽しめました。
三谷作品ならではの軽いノリですが、それでもとても面白かったです。

本人が監督していることもあり、流れが途切れることがなかったですね。
三谷幸喜脚本の作品って、他の人が作ると空気が途切れて乱れることがあるんです。
多分脚本が長すぎるのを詰め込んだからでしょうが、展開が早くてテンポがいいのも幸いしていますね。
十分にためるはずの場面も、非情にもポンポン進んでしまうこの快適さ(笑)
じっくり感動させる場面なんて無くて、最後まで勢いで突き進んでしまいます。

全般に女優陣が良かったですね。
男優では唐沢寿明が良かったです。
「新撰組!」のパロディなんかも散りばめてありました。
館内では驚くべきことに観客から何回か拍手が起きました。
悪く言えば自宅でテレビを見ているようなノリなのでしょうが、若い人から年寄りまですべての人が楽しんでいるのを見て、本当に大したものだと思いました。

Mrs.COLKIDの意見
「内容がテレビ的だった。三谷作品ということで最後にもう一捻りあるかと思ったのに・・・。役所広司が今までのようにただの「いい人」ではなくて、「情けない男」という面を見せたのが良かった」


2006年1月8日(日)
男たちの大和


昨年暮れに見ることの出来なかった映画に行ってきました。
映画館はもうがらがらかと思っていたら、驚くべきことにほぼ満席。
次の回も行列が出来ていました。
早めに出掛けたので、まあまあの席で鑑賞することが出来ました。

日本の戦争映画ということで、「どうかな・・・」と心配していたのですが、決して悪く無かったです。
見る価値は十分にありました。




大和というと漫画の「宇宙戦艦ヤマト」を思い浮かべる方がほとんどでしょう(笑)
僕はあの作品は非常に重要なものであったと思っています。
なぜならあの頃は戦争の生き残り組が社会にまだ大勢いたのです。
だからあの作品にはアメリカに負けてたまるかという根性が見え隠れしている。
しかしその世代が消えていくことにより、日本の社会から重要な重みが薄れていってしまった。

それで今回の作品の出来を危惧していたのですが、驚くべきことに一番恐れていた俳優陣の出来が非常に良かったです。
若手も全般に良いし、反町隆史や長島一茂(これは予想外でした)も素晴らしかった。
長島一茂って俳優の才能がありますね。
中村獅童は豪快な軍人が演じられる今では貴重な線の太いキャラクターの持ち主だと思います。
戦争中の記録を読んでいると、こういうタイプの人がけっこう出てくるのですが、この人以外で演じられる俳優が見当たりません。
女優陣も良く、鈴木京香はいつもの通り素晴らしいし、寺島しのぶが良かった。

この映画はむしろいままでの映画より素直に戦争を描いているように感じられます。
これを見ると、敗戦というものがいかに日本を捻じ曲げたかを痛感します。
いろいろな思想や思惑が交錯し、ただ自分の家族や恋人のために戦った・・と言えるまでに(あるいは見る者がそれを素直に受け入れるまでに)60年もかかった。
これは昨年の「ヒトラー」の時にも感じたことです。

演出はいまいちでした。
台詞回しで疑問に思うところは多かったし、30年位前の日本映画の演出と変わらない印象でした。
寺島しのぶと中村獅童のシーンなんか、これ本当に最近の作品??と思うような安っぽさでしたが、それがかえって妙なリアルさを与えてくれたかもしれません(笑)

特撮も良くなかったですね。
予算があるから仕方ないのでしょうが、特に飛行機が酷くて、プラモのアベンジャーがいっぱい出てきます。
動きにスピード感やリアリティがなくて、まるでウルトラマン並の特撮です。
もっとも仮にCGを使ったとしても、レシプロ機をリアルに描いた作品というのはお目にかかったことが無いので、難しかったかもしれません。

しかしこれらの欠点を人間ドラマがカバーしています。
お涙頂戴映画という批判も聞きますが、現実にこうだったのだから仕方ありません。
映画館の中は鼻をすすったり、ハンカチで目を覆う人たちでいっぱいでした(笑)

お客さんは中高年が主流で若者が少ないのが残念でした。
キャストやスタッフが「若い人たちにこそ見て欲しい」と口をそろえて言っているのをみても、若い人たちはよっぽど阿呆の集団に見えるのでしょうね(笑)
でも今回の若手の俳優陣を見ると、若手もまんざら棄てたものでは無いぞと感じました。
それに中高年のお客さんといっても、僕も含めて実際に自らが戦争を体験しているわけではありませんし。

僕の中学生の時の同級生のおじいさんは、大和の乗組員で生き残った口でした。
最後に海に飛び込んだ時、遠くに落ちたため沈没の渦に巻き込まれないで助かった・・という話をよく聞きました。
あの頃はそういう人が周りに一杯いました。

僕の父は激しい空襲の中を生き残ったのですが、その人生は死んでいった人たちに捧げる一生であったように思います。
撃墜王の坂井三郎氏も、亡くなるまで死んでいった戦友たちのことを後世に伝えることに献身しました。
主人公の老年期を演じる仲代達矢が、生き残ってしまった自分の人生の60年の意味を、最後にやっと見つける場面がありますが、それも同じことです。
戦争の傷跡は深く、たとえ生き残ったとしても、その後の人生を大きく変えてしまうものなのです。

この映画の中でもっとも重要な部分は、大和の乗組員がその道を選ばざるを得なかった事に説得力があることでしょう。
生き残った者や戦争を知らない世代が、後から戦時の行動の批判をしたって、その場で体験した人たちでないとわからない事がいっぱいあります。
パンフレットの中に阿川弘之氏の書かれた「大和を思ふ」という素晴らしい文章が掲載されていますが、これを読んだ時に世界最大の戦艦「大和」が持っていた意味がはじめて理解できた気がしました。